連盟の設立に至った動機と経緯は?
 
 理念的な動機としては、医師達の持っている【患者さんを治して元気にしてあげたい】という初心、医師のモチベーションが、成立しがたくなった社会状況というものがあると思います。このことに尽きるのではないでしょうか。
 準備委員会段階であるとはいえ、医師新組織の設立を目標とし、実名を公開できる複数の執行部と30人規模の組織運営役員を擁する団体の誕生は、注目すべ き事件であると思います。日本の同業組織の設立の歴史や、社会運動の歴史を紐解くと、成功した設立運動には、いくつかの共通した特徴があげられます。既存 の行政やアカデミア、ギルドなどに依存する事無く、現場の技術者が立ち上がったということと、時代の後押しがあったと言うことです。
 ですから、私たちがやろうとしていることは、やや抽象的になりますが、既成の権威に依存しない、時代にあった医師新組織を作り、国民諸階層の後押しを頂ける活動ということになります。

 設立の契機としては、医療変容が起こり、これまでの医師としての通念や覚悟と言ったものが、通用しない事件が多発したことをあげねばなりません。 2000年前後を境にして、医療事故冤罪や医療報道被害、医師バッシングにより、現場の医師達の士気がくじけたという流れがあります。この医師の士気がく じかれるという現象のバックグラウンドに何があるのか、私たち現場の医師は、診療や研修に多忙であり、この背景を総括する作業すら出来ていませんでした。
 医師の置かれている現状の背景にあるものを直感的に見抜くような個人的活動は単発ではあったようですが、組織だった活動は生まれてこなかったのです。医 療制度研究会の本田宏先生や、割り箸事件支援の会会長の川嵜先生などの活動、最近では周産期医療分野での支援活動を進めていった木田先生達の活動は、私た ちの運動のルーツであるということが出来ます。
 小松先生の【医療崩壊】という著書は、私たち医師のバイブルとして大事にされ、私たちの精神的な理論的な支えになっています。もはや、医療再生のために は、医師会や学会の重鎮や厚労省には任せておけないし、既存の団体にない、覚悟を持った組織が必要であるとの共通認識が生まれたことが大きいと思っていま す。

 実際に、この準備委員会が生まれた経緯としては、契機として、矢部弁護士のブログやYosyanさん達の医師ブログがありました。前者のブログの中では 主に、医療紛争の解決手段としての医療裁判制度に対する医師側の疑問と法曹関係者との応答が繰り返され、これが後にLMnetというSNSに繋がり、そこ で医師新組織の準備活動が始まります。また医師ブログでの参加者の論議が、医師間の共通認識と連帯感を作って言ったように思えます。ですから、準備委員会 の直接の契機としては、弁護士さんと医師のネット活動が大きいと言えます。
 同時に、医療従事者のコミュニティとして有名な、日経メディカルやm3comといったネット上のフォーラムや、リアルの支援活動者の経験があります。こ うした、リアルとネットでの経験の蓄積が準備委員会の結成をもたらしたと言えます。このように設立準備の経緯というのは、ネットとリアルの重層性という現 代的な特徴を持っているかも知れません。

 私たちの準備委員会には、一部特殊な事情もありますが、大きくみると、やはり、医師の初心を活かせる社会になって欲しい、という医師の善意と不安と危惧などがその動機になっていると言えると思います。
 
  準備委員会の目的と連盟の目的は?
 
 準備委員会の目的は、新組織を準備することです。あくまで現在の準備委員会は発展途上のものです。
私たち医師の同業者の中には優れた才能や人格を持つ者がいまして、私が世話役を務めているのは、ワンポイントリリーフにすぎません。今、私が語る、連盟の 目的というのも、その意味では、発展途上の準備委員会が語る【組織の目的】であって、更に意義あるものに洗練する必要があると思います。そうした制約を理 解していただいた上で、あえて、【組織の目的】を説明すれば、それは、医師と医療が真の社会貢献を果たせるようにすることだ、と考えています。
 人がこの世にいるのは、幸せになるためだと思っています。目に見える形で、戦争や飢餓といったものがない現代の日本では、健康であることが何よりも幸せ に繋がるだろうと思えます。こうした国民の幸せを願う政治を実現する為には、命の安全保障である、広い意味での医療福祉に、国は最大限の配慮を行うべきで す。
 ところが、国民の健康を軽視する政治勢力は、医療費亡国論を刷り込まれた人達に擦り寄り、医療費抑制政策からの転換を妨げようとしています。私たちの組 織は、同業者の利益だけを追おうとは考えていません。勿論、公立病院勤務医の過酷な医療労働環境や、赤字で倒産しかかっている零細企業である診療所を元気 づける事は、重点課題として位置付けていますが、何より大事な点は、医師の初心を生かせる環境を作ることによって、初めて、国民の健康が守られるという事 なのです。
医師新組織の目的は、医師が患者や国民と共に、健康を維持して幸せになるための協業を成立させるための活動であるということになります。このことは、先ほど言った、医師と医療の真の社会貢献を求めるということに他なりません。