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噂の東京マガジン「たらい回し!救急病院過酷な現場…医師不眠36時間」について


 我々医師は長年にわたり国民に良質な医療を提供しており、日本の医療は世界保健機構(WHO)と経済協力開発機構(OECD)の報告書で、医療健康達成度、健康寿命が第1位と評価され、総合世界一となっているところである。
 しかしながら、世界的に見ても、日本の人口に対する医師数は少ないとされており、特にOECD加盟国で比較した場合、日本の人口1000人あたりの医師数2.0人はOECD平均の3.0人を大きく下回り、30カ国中27位と低い水準に止まっている(2004年データ)。一方、1年間に医師の診察を受ける回数は国民1人当たり日本は13.8回で、データがある28カ国中で最多である(2004年データ)。これは、少ない医師が多くの診察をこなさざるを得ないことを示すものである。さらに近年、日本の高齢化率は急速に上昇しており、医療現場の業務量も急速に増大しているのが現状である。
 一方、日本は国民皆保険制度を採っており、医療の価格は事実上国の統制下にある。実際、医療費・GDP比でOECD加盟国中18位であり、医療費の水準も低く抑えられている。このため、現在の医療は、医師を始めとする数少ない医療従事者が低い人件費で、日夜文字通り不眠不休の努力することにより維持されているものである。事実、現在の医療の現場は過密で過重労働の職場になっている。特に勤務医の労働環境は劣悪であり、勤務時間の平均は1日12.2時間、 1週間で72時間、1ヶ月で280時間、夜間当直回数月4.5回、当直明けの次の日通常通りの勤務をしている医師は98%という状況である(勤務医アンケート調査)。当直明けの次の日に通常通りの勤務を行うということは連続32時間労働を続けるということを意味している。
 こうしたなか、御社の去る3月9日放送の“噂の東京マガジン”の番組中において出演の森本毅郎氏らが現在の医療の現状とは全く乖離した下記事項を内容とする発言を行ったことから、当連盟準備委員会に全国の医師等から極めて激しい反発・抗議が寄せられているところである。
 以上のこと等から、公共性が極めて高い電波を使用し、かつ影響力も大きい全国ネットワークを有する御社が医療現場の危機的状況を無視し、事実誤認に基づいたあり得ない内容で医療崩壊を誘発する報道を行ったことについて強く抗議する。


森本毅郎氏らの発言要旨とこれに対する反論

1.現在の医師不足は仕事がきついから辞める、儲からないから辞めるなど医師のモラルの低下が主因である。

【反論】

勤務医はいつ過労死してもおかしくない労働環境に置かれている。事実、近年医師の過労死、過労自殺が急増しているのは広く知られた事実である。前述の繰り返しになるが、勤務時間の平均は1日12.2時間、1週間で72時間、1ヶ月で280時間、夜間当直回数月4.5回、当直明けの次の日通常通りの勤務をしている医師は98%という状況である。つまり、98%の勤務医が最低でも連続32時間労働をしているということである。そうした状況を是認するのが医師のモラルだというのはこの状況に対する想像力が欠如している。過労死してでも医療現場で働くべきだと公共の電波に乗せて言い切る森本氏のモラルとはいかなるものなのであろうか。異常といわざるを得ない。


2.医師を育成するのに税金から助成金が出ているのだから、卒業後すぐに開業できないように縛るべきだ。

【反論】

医師養成に税金から助成金が出ているのは事実だが、医学部でない国公立大学と比較して医学部が学生一人あたりの助成金が多いという事実はない。

例として、奈良県の国公立大学である奈良県立医科大学、奈良教育大学、奈良女子大を比較する。単純に歳入の交付金収益を学生数(学部生+院生)で割った値を示す。

奈良県立医科大学 1,798,661,000 / 911 = 1,974,380 円/人年
奈良教育大学 2,552,640,825 / 1300 = 1,963,569 円/人年
奈良女子大 3,471,463,000 / 2850 = 1,218,057 円/人年

<交付金額引用元>

奈良県立医科大学
  奈良県立医科大学概要
奈良教育大学
  奈良教育大学自己評価書
  奈良教育大学の決算について
奈良女子大
  業務実績に関する報告書
  財務諸表


さらに、医師の多くが卒後すぐに開業しているかのように言っているが、実際には現在勤務医を辞めて開業していっている医師のほとんどは卒後10年〜15年以上の中堅〜指導層の医師である。自治医大、防衛医大など、学費全額免除の代わりに縛りを設けている医学部でも縛りは卒後9年である。現状でもほとんどの医師がこれらの縛りの年数以上を勤務医として働いており、縛りがないから勤務医が開業医に流れるというのはあたらない。


3.昼に病院受診のできない人もいるのだから、夜も病院は開いているべきだ。昼間受診できず、夜に救急に来るのはみんなコンビニ化だっていうのは言い過ぎだ。病院の方が変わってコンビニ化するべきだ。

【反論】

前述したように、日本の医療では業務量に対する人員が過小である。現在の医師数では、夜間も昼間と同じような診療体制にすることは不可能である。これは医師数だけの問題でなく、看護師、薬剤師、診療放射線技師や臨床検査技師についても言えることである。多くの救急病院で夜間に軽症の(救急ではない)受診を行う患者が急増しているために、勤務医の過重労働に拍車がかかり、疲れ果てた勤務医が現場を去っていくというのが現状である。
そもそも、コンビニエンスストアは昼間だけ営業のスーパーマーケットより商品単価を上げることで夜間労働の人件費を捻出している。日本では前述の通り、医療の単価は事実上の統制下にあり、夜間診療の単価を上げることはできない。救急の患者であれば、保険診療上の加算が受けられ、事実上の割り増しが存在する。しかし、夜間の救急病院の受診の95%は軽症の患者の受診であり、これらの患者の診療は救急の加算が受けられない。夜間は労働基準法上、割増賃金を支払うことが定められているが、割増分はどこから捻出できるのであろうか。

 

 

全国医師連盟 論説委員


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