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「小児科医過労自死事件の民事訴訟高裁の判決に際しての声明」

 過労自死の本事件では、行政訴訟に於いて、労災認定が確定している。
今回の民事訴訟では、医師の過重労働に対する使用者の安全配慮義務が問われた。東京高裁は、東京地裁で否定された過重な業務とうつ病の因果関係については認めたものの、過重な勤務であっても病院側が勤務医の疲労や心理的負荷の蓄積による健康障害を具体的客観的に予見できなかったとして、損害賠償請求を棄却した。

 しかし、今回の高裁の判断は、医師の労働の特殊性についての理解が欠けており、医療安全への司法の社会的責任を軽視しているといわざるをえない。

 高裁の判断では、診療科の責任者として、当直などの勤務割り等を組む立場の医師であれば、本人の判断で労働量を制限できるはずであるとして、結果的に医師個人に責任を転嫁している。

 医師の当直や時間外労働は、診療治療を求めている患者さんがその場にいるという点で、その他の労働とは性質を異にする。病院勤務医師数に制約があり、地域の求めに応じることができない状況となった現在でも、診療治療の求めを拒んではならない(応召義務)とされる医師の立場では、労働量を制限することは困難である。

 地域を支える急性期医療は、公共的インフラの一部でもあり、一医師が個人的裁量で労働量を調節できるような性質のものではないし、更には、全国的に医師が不足している中、代務を頼めるような余裕はどこにもない。

 地域医療供給体制を維持することは行政の責任であり、一個人の責に帰すべき事柄ではない。
現在、殆どの急性期病院で当直業務を行っている医師の労働環境は労働基準法に違反 しているのが現状である。本来ならば厚生労働省労働基準局による全国規模で強力な是正が必要なのである。

 この状況を放置するならば、基幹病院勤務医をはじめとする救急医療に携わる医師の充足は困難になる。
「労働が過剰であることの責任は、病院ではなく個人に帰す」という今回の判決は、急性期病院の労働環境が改善 しないかぎり、急性期病院の医師が流出する誘因になると考える。

 

 全国医師連盟は、患者と医療従事者の権利を守り、医療の質の向上と、診療環境の改善を目指しています。私たちは、現場から医療政策を提言し、現在疲弊している 医師の意欲を回復させ、患者によりよい医療を提供できるように奮闘いたします。


平成二十年十月二十三日
全国医師連盟執行部

*参考 支援する会HP