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二階経済産業大臣の発言に対し抗議しました

 二階俊博経産相の『医者のモラルの問題』発言への抗議

 昨今の重症妊婦受け入れ不能の事案に関し、舛添厚生労働大臣と二階経済産業大臣との会談において、 二階俊博経産相が「政治の立場で申し上げるなら、何よりも医者のモラルの問題だと思いますよ。忙しいだの、人が足りないだのというのは言い訳にすぎない」と発言したことが報道されました。 (11月10日のTBSニュース(イブニング・ファイブ)による)

上記発言に対し、私たち全国医師連盟は強く抗議します。

現在問題となっている産科救急の問題は、基本的に人員や施設の不足に起因しています。多数の病院で重症妊婦が受け入れ不能である理由の大半は、 NICU(新生児特定集中治療室)が慢性的に満床であることです。そして、NICUが常に満床である理由は、不妊治療や高齢出産による低出生体重時の増加という患者側の要因に加え、NICUを出た後に利用する必要がある『後方ベッド』が整備されていないこと、また、新生児科医師や看護師の不足のためNICUが増床不能であることです。

 墨東病院の件では、総合周産期母子医療センターであるに関わらず、当直医が一人であったことが問題とされていますが、これは産科医数の急速な減少を反映しているものと考えられます。ここ数年、全医師数が増加する中、産科医は分娩数の減少を上回る率で減少しています。日本産婦人科医会の調査では、お産を取り扱う病院も昨年から今年にかけて全国で8%(104施設)減少している一方、一施設当たりの産科医数は殆ど増えていません。さらに、先日発表された、日本産婦人科学会の産婦人科勤務医・在院時間調査では、診療や待機などで拘束されている時間は月平均で300時間を超え、中には500時間以上の医師もいることが明らかとなりました。また一般病院のうち、当直勤務がある一般病院の医師は月平均4.2回の当直をこなし、病院にいる時間は月平均301時間でした。これは、平均的産科勤務医は、過労死認定レベルを超える長時間勤務を継続して行っていることを意味しています。

産婦人科勤務医・在院時間調査 第1回中間集計結果 報告と解説(日本産科婦人科学会)

このような産科医の過酷な勤務を放置し、現状を「医者のモラルの問題」と切り捨てれば、新しく産科医になることを希望する医師が少なくなるばかりか、現在勤務している医師がどんどん離職している現状を改善することは出来ません。

今、政府、国会が取り組むべきことは、産科救急の問題で医師のモラルや情報伝達システムの不足という矮小化した議論に向かうことなく、周産期医療に投入可能となる医療資源を可能な限り増やす努力をすることです。産科医や、新生児科医、その他の医療従事者の労働環境を整備して人員を増加し、NICUや転出先の病床を整備しない限り、IT技術を駆使しても、殆どの病院が受け入れ不能であることが早く判明するだけであり、問題の解決には繋がりません。

今回の二階経産相の発言は、国務を担う立場での発言として、著しく勉強不足で、事実の誤認を含んでおります。大臣の発言で、モチベーションが下がり、さらに離職する産科医が増えることを危惧し、発言内容の撤回を求めます。

平成20年11月12日 全国医師連盟執行部