イメージを提唱して講演を終えた。
続いて田谷智医師の「なぜ,夕張に?そして,この1年余りを振り返って」というタイトルで講演をおこなった。神戸出身で大学は和歌山,卒業後は和歌山,大阪南部の勤務経験をもつ田谷智医師は,初期研修を終えた後,後期研修は地域医療,家庭医,総合医を希望しており,村上智彦医師の動向をwatchしていた。夕張希望の杜のホームページで医師招聘を知りエージェントを通して応募した。「医師は地域に興味はないのか?」の問いには,彼の周りには地域で働きたい医師はいる。そして,総合医,家庭医志向の医師は増えつつあり,実際,夕張の見学実習者は増えている。しかし,その皆がいわゆる"赤ひげ"的存在をめざしているわけではなく,逆に地域での"赤ひげ"を求められることが負担になることが多いとのである。従来の医局人事頼みの医師供給システムではなく,村上医師の提唱する地域志向の医師が循環的に供給される研修システムに共感し,その地域で住みたいそして働きたいという魅力があれば必ずや医師はやってくるであろうと強調した。医療崩壊を防ぐためには,医師招聘以前の問題として地域が医療に対する過度な期待を改める必要がある。いくら医療を充実させたとしても安心が担保されるわけではないことの説明責任は行政にあり,住民一人一人に健康を守るという意識を持たせ,それをサポートし,見合う人員の確保,予算の拡充,地域医療福祉従事者の労働環境を整備することが行政の責任であるとした。
3人の医師の講演の後,地域住民からの質問を受けるキャッチボールのコーナーが行われた。
まずは、上富良野住民からの質問、「本当に地域医療を希望する医師は多いのか?大学病院では医師不足のため地域への医師の派遣を制限している。また、地域医療を目指す医師より留学や技術習得を優先する医師が多いのではないか?」永森医師の答え「地域医療を目指している医師が今の大学病院では異端者のように見られる現状はあるものの、徐々に認知されつつあり、家庭医の研修のために留学する医師も出てきている。しかし、地域医療を希望した医師が実際に働いてみると地域に幻滅し専門医として都会での生活にもどってしまうこともある。」2つ目の質問として、大学出張医とはどうしてもコミュニケーション不足になり良好な患者医師の良好な関係が保てないという問題をあげた。村上医師は「若い医師の多くは赤ひげ医療にアレルギーを持っている。医師が来るだけでもありがたいと思って住民の方から積極的にコミュニケーションをとる努力が必要である。」と答えた。
患者としてドクターヘリに乗った経験のある住民から村上医師の住民が健康に対する意識改革をすべきという考えに賛同のコメントがあり、それを受けて村上医師から「自分は、健康(生活習慣病や予防医療)に真剣に取り組んでがんばっている患者さんには甘く、健康を省みない患者さんにはきつく接している。医師も真剣に取り組んでいるのだから患者さんにも真剣に取り組んでほしい。」と発言、永森医師は「1年前は村上医師が怒鳴りっぱなしであったが、1年後には患者さんと和気藹々に接している。」と付け加えた。
続いて村上上富良野町議会議員から,上富良野町立病院における富良野協会病院との病々連携(泌尿器科、循環器、眼科外来)、バリアフリーの改築、経営改善についての報告があった。村上医師は,上富良野町の肺炎球菌ワクチン助成,上富良野町町議会議員の医療に対する関心の高さを褒め、さらに来る町長選挙では住民には医療に理解のある首長の選択を期待する旨の発言した。
次に旭川東高校生から,今後医師増員が行われる予定であるが医師を増産することによる"質"の低下を危惧する質問があった。村上医師は「医療の質とは何?高度医療が質が上と勘違いしているのではないか?我々は"いい医療"を目指している。医療は目的ではなく手段と考えるべきた。」と,永森医師は「医療の質に対しての考え方の違いがあるであろう,急性期医療の進歩も必要であるが,我々は慢性期医療,予防医療にその価値を見つけている。」と,そして田谷医師は,「病気の多くはCommon diseaseであり生活習慣の改善させるためには,より多くの医師が必要とされる。また,医師数が増えて質が悪くなるか?の問いには医師が医師に対して評価し合う事で切磋琢磨する傾向になることがその解決策になるのではないか」と,それぞれ答えた。
地域医療に携わることを目指している旭川東高の女子高生のコメントの後,村上医師は地域医療での医師の役割は大きくないことを医師も住民も自覚することが大切で,いわゆるモンスターペイシェントを生み出した医師の責任についても説明した。永森医師は女子高生へ,"赤ひげ"になりたいのならアドバイスはできないが,地域医療に興味をもつ医師が気軽に働くことのできるシステムの必要性を述べた。田谷医師は,大学病院勤務時の"患者さま"という言葉また従来の医師が上から見下ろすパターナリズムに違和感を持っており,医師と患者の対等性が重要である旨の発言をした。
次に今井比布町議会議員から,人口4310人(65歳以上35%)の旭川市に隣接する比布町の紹介(遊湯ぴっぷとスキー場),町財政において国民保険料に占める割合が大きく現在住民への予防医療の取り組みに努力している旨の報告と公設民営の診療所における人工透析治療について村上医師に質問をした。村上医師は,透析医療は50人の患者さんがいないと採算が合わない点,一人当たり600万円/年の医療費について答えた。また伊関氏も言っているように,地域での医療は,「あれもこれも」というすべてを満たすのではなく,「あれとこれ」といったある程度限定した医療をしていかないと維持は難しいと主張した。
講演会の最後に
山川護上富良野町立病院事務次長から「上富良野町立病院の取り組み」の発表が行われた。週間金曜日(2008.8.1,p28-29)「自治体病院の再生奮闘記」北海道・上富良野町立病院の試み(平田剛士)の記事 にも取り上げられたよう兼古稔医師との二人三脚で取り組んできた病院改革の過程と今後の取り組み(平成20年12月に医療療養病床16床を廃止して,今までの一般病床44床と介護療養型老人健康施設28床の病棟編成),上富良野町財政における病院事業の詳細な会計報告を行った。最後に「いま,公立病院にもとめられているもの」として患者,住民,議会に,病院を理解してもらうための情報発信の必要性をあげた。また,自治体病院には「病院の経営に携われる職員」が求められており,「地域医療を守るために自治体職員が何をしてきたか?何をすべきか?」を考えなければならないと主張した。
講演会終了後,金子益三代表から自身の11月25日告示11月30日投票で行われる予定の上富良野町長選出馬の報告とそれに伴う地域医療選出された。
研修会は場所を
吹上温泉白金荘に移して交流会が開かれた。
吹上温泉はテレビドラマ「北の国から」で宮沢りえが入浴したことで一躍有名になった。上富良野町から道道白金線で30キロ程度の場所である。交流会前に温泉に入ったが温度差の違う4種類の露天風呂は最高であった(私は旭川育ちであるが,吹上江温泉は初体験)。交流会では上富良野名物の「豚しゃぶ」をポン酢とゴマダレをミックス(この食べ方がおいしいとのこ)して食しながら,会員を中心として地域医療を熱く語り合われた。22:00ごろワインの差し入れをもって夕張から戻ってきた兼古稔医師を見届けたあと,私は乾杯の挨拶をしてその場を後にしたが,夜明けまで会は続いたとのことである。地域医療を守る地方議員連盟研修会のような催しが全国各地でおこなられることが,地域医療の崩壊をくい止めることと信じて報告を終える。
ちなみに,
成田祐樹小樽市議会議員のブログによると,
次回の地域医療を守る地方議員連盟の会は、小樽で開催する事になるようである。いままでの夕張や上富良野の研修会と同様に市民も参加できる公開講座で来年1月か2月中旬の開催を予定しているとのことである。私も,最大限の協力をしたいと考えており,皆様のご参加を希望する。