サイト内検索 powered by Google
 
 ◆全国医師連盟について  ◆イベント情報  ◆解説・オピニオン  ◆リンク他


全医連と全国医師ユニオンは、11/22に共同記者会見を行い、【医療機関における36協定全国調査結果】を発表致しました。

 

医療機関における36協定全国調査結果 
                  2009年11月22日  全国医師連盟 全国医師ユニオン

 全国医師連盟と全国医師ユニオンは、勤務医の労働条件改善活動の一環として、医療機関における36協定(時間外労働や休日労働に関する協定)の合同調査を行った。
日本には約8000の病院があるが、この調査では全国の主要病院1549箇所を対象とした。大学附属病院、国・公立、労災、赤十字、済生会、JA厚生連、国保、民間病院を含む、地域における拠点となっている病院である。
 調査は2008年末から2009年初頭に、全国の労働基準監督署に直近の1年半の間に行われた協定の開示請求を行い、開示された1091病院に関して集計・分析を行った。開示がなかった458病院はこの1年半の間に、協定の締結が行われなかったものと解される。

 1、集計結果
@ほとんどが救急を担当している拠点病院にもかかわらず、36協定の締結・開示は7割にとどまり、岩手・三重・奈良・愛媛・沖縄では約半数が開示されず、この間協定が締結されていなかったと考えられる。
A全国集計の結果(別紙)から、職種欄が黒塗りされ医師を判別することができなかったものが約30%みられた。医師又は医師を含むと明記され確認できたものは57%であった。
B1日の最大延長時間は20時間、1ヶ月の最大延長時間は200時間、1年の最大延長時間は1470時間であった。
Cまた、36協定で定められている1ヶ月の時間外の延長が45時間以下のものは54%であった。
Dいわゆる「過労死ライン」と呼ばれる月80時間以上の時間外労働を定めた協定が41都道府県168病院(15%)あり、特に東京の都立病院では全て120時間となっていた。

 集計は各県別に行ったが、各県の評価は行っていない。その理由は、今回の36協定調査は書類上のものであり、実際にこれが守られているかどうかは不明であること、また労基法上適切な協定であれば、むしろ現実の医師労働を全く反映していない可能性が高いと考えられることの2点による。

 2、問題点
上記の結果から、以下の問題点を指摘することができる。
1)情報公開上の問題
開示された36協定に不適切な黒塗りが多数認められた。特に職種の内訳に関する黒塗りは、個人情報とは全く関係がなく、情報公開の趣旨に反する。
また、黒塗りに関しては、労基署によって対応がまちまちで一貫性が見られなかった。これらは労働基準監督署の情報公開に対する姿勢に問題があることを示している。

2)36協定が開示されなかったものに関して
36協定は、その趣旨から毎年締結することが基本である。1年半の間に36協定が締結されていない病院が約30%もみられることは、大きな問題である。

3)36協定の内容に関して
@医師が含まれていない36協定が数多くみられた。
 週40時間以上の労働を行わせるには、労働基準法第36条に定められている36協定を締結する必要がある。調査した病院は地域の2次3次救急を担うものが多く、重傷者の治療を担う病院であることを考えると、週40時間を超える労働を医師が行っていることは明らかである。むしろ最も長時間労働している医師が36協定を結ばずに働かされている実態は、極めて重大な違法行為である。

A1ヶ月45時間以内の時間外延長とする36協定が多数みられる。
 多くの病院では、夜間・休日の勤務は宿日直として扱われ、時間外労働や深夜労働、休日労働としては扱われていない。また手当も多くは宿日直手当や拘束時間を無視した労働時間のみの賃金で、時間外労働・深夜・休日手当が支払われていない。これらに関しては、すでに裁判での判決や労基署の是正勧告などが出されている。
先に述べたように、今回調査した医療機関は、ほとんどが24時間体制で高度医療を提供する病院である。日本では医師の交代制勤務がほとんどみられず、多くの病院の当直業務が32時間連続労働を前提としている現状を考えれば、医師に関しては1ヶ月の時間外労働時間が45時間以内という協定内容は全く守られていない。これも重大な労基法違反であるといわざるを得ない。

B過労死ラインを超える時間外労働を定めた36協定が多数存在する。
 1ヶ月80時間を超える時間外労働は、過労死との関連性が強いとされている。今回の調査では、最高1ヶ月200時間の時間外労働を定めた36協定がみられた。労働基準法及び労働契約法の趣旨からみれば明らかな逸脱であり、これを認めた労基署は法律の趣旨を尊重し、当該病院に速やかに改善の指導を行うべきである。
また、多くの病院で80時間を超える36協定がみられた。医師不足によりやむをえない診療科のあることは事実であるが、120時間以上という36協定が少なからず存在することは、重大な問題であり、改善のための早急な取り組みが求められる。

C特別条項の濫用
 36協定では月45時間の延長を限度としているが、これを超える必要がある場合のために特別条項が設けられている。労基法では、これは「臨時的なもの」であり「一時的突発的に時間外労働を行わせる必要があるもの」に限られているが、その趣旨は本来、1年のうちで季節的に労働量が大きく変動する業種において、繁忙期には月120時間の時間外労働が必要であるが、閑散期には時間外労働は全く行わないという状況を想定したものである。しかるに、病院という業種では繁忙期と閑散期の区別はなく、いわば一年中が繁忙期であり、急変時対応や当直での夜間救急対応は医師にとって常態的な労働である。この実態を形式的に合法化するために特別条項を用いている可能性が極めて高く、大きな問題である。

D自動更新について
 36協定は、毎年労使によって結ばれるべきものである。それにもかかわらず、労使の「一方又は双方から異議が申し立てない限り、更に1年更新するものとし、以後この例による」と事実上の自動更新を認める項目がみられる。このような条文は1ヶ月120時間の時間外労働を認めている協定に多くみられる。これは過重労働の改善への働きを弱め36協定を形骸化させるものであり、労組がこのような協定を行うこと、さらに労基署がこれを認めることは遺憾である。

3、今回の調査から明らかになったこと
 公的な医療機関における全国的な労基法違反が明らかになった。また、労基法の趣旨から逸脱した協定が全国の公的な病院に多数みられた。これらの違法は法治国家として許されることではない。また、病院管理者はもとより監督官庁の法律遵守に対する意識の欠落を指摘することができる。さらに医師の過重労働は、医療安全を脅かし、国民への利益に反することは明らかである。
 今回の調査結果は、勤務医の労働問題に関する厚労省行政の無作が医師数抑制政策を安易に実行させ、勤務医の過重労働を放置し勤務医を疲弊させ、結果として医療崩壊を引き起こしている事実を勤務医の労働の面から裏付けるものである。